白内障手術について
白内障とは、人の眼にもともとある『水晶体』という透明な組織が、加齢や糖尿病などの全身疾患、外傷などによって濁ってしまう状態です。そのために、視力が下がる、かすんで見える、タブって見える、光がまぶしいなどの症状が出てきます。。白内障手術は、その濁った水晶体を手術によって取り除き、かわりに『眼内レンズ』という人工のレンズを移植する手術です。現在のところ、薬での治療には限界があり、視力を回復させるには手術以外の治療法がありません。
白内障手術は年々進歩してきており、10年前の手術に較べても現在の手術は格段に低侵襲となりました。端的に、それは手術時の切開創の大きさに現れています。30年前は、水晶体を丸ごと取り出すために約11mmの大きさの切開が必要でした。当然切開創は縫わなければなりませんが、その力加減がむずかしく術後に強い乱視が出ることが普通でした。手術時間も1時間以上かかり、術後も安静にしている必要がありました。25年ほど前には、超音波乳化吸引という水晶体を超音波で砕いて吸い取る手術器械が開発され、切開創の大きさが眼内レンズと同じ6mm程度に小さくなりました。切開創は1針だけ縫えばよくなりました。20年ほど前には眼内レンズを折りたたんで入れる方法が主流となってきました。切開創も3.5mm程度になって縫わなくてすむようになり、この頃より白内障の日帰り手術が普及してきました。ここ数年の白内障手術は、さらに切開創を小さくするように進歩してきています。当院にても採用している白内障手術は、切開創の幅が2.0-2.4mmという『極小切開白内障手術』です。この大きさの切開創から直径6mmの眼内レンズを挿入できるように、今では眼内レンズを特殊なカートリッジに装填して眼内に挿入しています。このような進歩から、今では手術時間は10分以下となり、術後の安静も不要となりました。視力も術後1日目に回復する方がほとんどで、早期からの日常生活への復帰が可能となっています。